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万博客へ道頓堀で「HIROSHIMA」

万博客へ道頓堀で「HIROSHIMA」
…被爆少女モデルの紙芝居を英語で上演、SNSでも発信
読売新聞 2025年5月8日
大阪・道頓堀の路上に立ち、広島で被爆した少女の物語を英語の紙芝居で伝える男性がいる。地域新聞編集長の吉村大作さん(45)(大阪市鶴見区)。大阪・関西万博に訪れた外国人観光客らを通じて平和への願いを世界に広めようと、万博会期中の184日間、休まず上演するつもりだ。(岡田優香)
消えない雲
「Kei’s mind is overshadowed by lingering mushroom clouds.(ケイちゃんの心はずっとキノコ雲で曇っています)」
大阪市中央区の道頓堀で、白いタンクトップと、カーキ色のズボン姿の吉村さんが、紙芝居をめくりながら英語で声を張り上げると、外国人観光客が足を止めて聞き入った。
紙芝居は「ケイちゃんの消えない雲」。8歳の時に広島の爆心地から約2.4キロ・メートルで被爆した小倉桂子さん(87)をモデルにしたオリジナルの作品だ。
黒く焦げた人たちが倒れている様子などが描かれた12枚の絵とともに、年を重ねた小倉さんが「核兵器を使うなんて、もう二度と繰り返してはなりません」と訴える様子を紹介する。
夫婦でオランダから訪れていたコルフ・サンダーさん(34)は「恐ろしい出来事が忘れられつつあるなか、記憶を伝え続けることは大事だと思う」と話した。
避難の美術家が絵
吉村さんが小倉さんと出会ったのは、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めた2022年。吉村さんが、ウクライナから避難してきた美術家ユリヤ・ボンダレンコさん(33)らを伴い、広島平和記念資料館を訪ねた際、語り部を続ける小倉さんの被爆体験を聞いた。
吉村さんは、高齢化で被爆者自身が体験を語ることが難しくなっていることを知り、「自分にできることをやってみよう」と考え、紙芝居を思いついた。
文章を作る際は、誰にでもわかりやすい表現を心がけたといい、知人に翻訳を頼み、ボンダレンコさんに水彩画を描いてもらって紙芝居を完成させた。
ボンダレンコさんは「私には、日本人の痛みがわかる。コツコツと、できることを続けることが世界を変える」と話している。
吉村さんは、被爆者ではない自分が語ってもよいのか葛藤したが、小倉さんから「一滴が集まり海になるように、一人ひとりが平和を発信しないといけない」と背中を押してもらったという。
100言語に
上演風景は、SNSでも発信している。大阪の高校生たちに協力してもらい、ヘブライ語やネパール語、アラビア語など100言語以上に紙芝居を翻訳し、ホームページに順次、掲載していく予定だ。
万博には、ウクライナやパレスチナなど戦争や紛争に直面する国や地域も参加している。吉村さんは「未来社会を考えるうえで前提となるのは平和であること。万博を機に、戦争や核開発がもたらす苦しみについて考えてほしい」と話した。