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「悲しみ消えない」原爆の惨状、紙芝居で伝える

「悲しみ消えない」原爆の惨状、紙芝居で伝える 

大阪の男性上演 110カ国語以上に翻訳

産経新聞 2025年9月5日

大阪・新世界の路上で原爆を題材にした紙芝居を披露する吉村さん=7月15日、大阪市浪速区
大阪・新世界の路上で原爆を題材にした紙芝居を披露する吉村さん=7月15日、大阪市浪速区

先の大戦で広島、長崎に投下された原子爆弾の惨状と核兵器廃絶への思いを伝えようと、外国人観光客でにぎわう大阪の繁華街で、紙芝居を上演している男性がいる。地道な活動が実を結び、今夏、2017年にノーベル平和賞を受賞したNGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のメリッサ・パーク事務局長との対談も実現した。大阪の高校生らの協力のもと紙芝居は110カ国語以上に翻訳され、世界へ発信されている。

「たった一つの核兵器が、十万人を超える命を奪いました」「死んでしまった人も、生き残った人も、その悲しみは何十年たっても消えていません」

海外からの観光客でにぎわう大阪・新世界(大阪市浪速区)。戦争と平和や地域の社会課題などについて発信しているジャーナリスト、吉村大作さん(45)=大阪市鶴見区=が脚立の上に紙芝居を載せ、英語で朗読していた。

紙芝居は、80年前に広島に落とされた原子爆弾を題材にした「ケイちゃんの消えない雲」。世界各地で自らの被爆体験を発信している小倉桂子さん(88)のエピソードをもとに、原爆で家族や街を失い心に深い傷を負った少女の半生を描いた作品だ。東京から観光で訪れた米国人留学生の男性(19)は「とても重いメッセージが詰まった作品だった。悲劇を私たちはずっと心に留めなければならない」とショックを隠せない様子で話した。

「戦争なくしたい」

吉村さんはこれまで、ロシアのウクライナ侵略で仕事を失った現地避難民への仕事の仲介や、現地の被災がれきを使ったアート作品の制作などを手掛けてきた。

そうした中、今年戦後80年と大阪・関西万博開催というタイミングに合わせ、子供の頃に夢見ていた「戦争をなくしたい」との思いを少しでも形にしようと紙芝居の上演を思い立った。

絵はウクライナから日本に避難している女性画家、ユリヤ・ボンダレンコさんが作画。吉村さんは、よりリアリティーを出すため、紙芝居を上演する際は戦時下の日本を意識した服装にしている。万博が開幕した4月13日から路上での活動を続けているが、足を止めて聞いてくれる外国人観光客もおり、反応は上々だという。

翻訳に高校生協力

 

 
紙芝居「ケイちゃんの消えない雲」を読み上げるICANのメリッサ・パーク事務局長=8月10日、大阪市
紙芝居「ケイちゃんの消えない雲」を読み上げるICANのメリッサ・パーク事務局長=8月10日、大阪市

ICANのメリッサ・パーク事務局長との対談は事務局長の来日を知り、SNSを通じて自身の活動を伝えたことで実現した。吉村さんも「まさかと思った」という対談は8月10日、大阪市内で行われ、事務局長は「感動的でとてもクリエーティブだ」と評価、「紙芝居はメッセージと感情の両方が伝わってくる。皆が見るべきだ」と述べた。

紙芝居は、大阪府立都島工業高のメカトロニクス研究同好会の生徒らの協力を得て、フランス語や中国語など110カ国以上の言語に翻訳された。吉村さんは「生徒たちの支援に感謝したい。紙芝居が世界各地で読まれ被爆の事実が伝わることで、戦争や核兵器のない世界に近づくはずだ」と期待を込めた。(秋山紀浩)

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